バルトーク「子供のために」
ご訪問いただき、ありがとうございます。
石川県金沢市(泉野町)のまーぶるピアノ教室
ピアノ講師の中村真里です。
本日はバルトークの「子供のために」を
ご紹介いたします。
作曲の背景
バルトークはリスト、
シュトラウスの影響を受けていたので、
若いときは「ハンガリー的」作品を書き
そのスタイルはリストの
「ハンガリー狂詩曲」風
といえるものだったそうです。
ですが、真のハンガリー精神は
農村で伝承されている
民族音楽の中にあると気づき、
コダーイから方法論や
先行研究を学びながら、
二人で民族音楽の採集旅行を始めます。
この旅行を始めてから
「3つのチーク県の民謡」
「14のバガデル」
「10のやさしい小品」
「子供のために」などの
ピアノ曲集を発表しました。
中でも「子供のために」は、
「ピアノを学習する子供たちに
採集旅行で得た民謡の
簡素で感傷的ではない
美しさを伝えるために書いた。」
とバルトーク自身が述べています。
更にこの曲集は、民族音楽採集、
研究の大規模な成果として
画期的な業績であり、
発売当初から人気を得、
バルトーク自身も
愛し続けた作品だそうです。
ハンガリー民謡について
①音階
✦5音音階「ラドレミソ」
✦5音音階にいくつかの音が付加された音階
エオリア旋法
ドリア旋法
フリギア旋法
ミクソリディア旋法
✦6音音階「ドレミファソラ」
✦これにあてはまらない音階もある
ハンガリー民謡のジャンル
≪子供の歌≫
✦遊戯の歌✦踊りの歌✦唱え歌
≪叙情歌≫
✦愛の歌✦酒の歌✦バラード
✦冗談歌✦兵士の歌✦豚飼いの踊りの歌
✦生活風景の歌✦悲痛な歌
≪婚礼の歌≫
≪縁結びの歌≫
≪年中行事の歌レゲシュの歌≫
この曲集の特徴
この曲集は、バルトーク自身と校訂者、
編集者による以下の内容の説明書きが
各曲に添えられています。
✦ジャンル(ex.子供の歌✦遊戯歌)
✦スタイル(音階)
✦歌詞(ハンガリー語&日本語)
✦遊戯動作(ex.手をつないで回る…)
✦補足説明(最小限の曲の特徴)
更に編集者であるパップ晶子先生の
細かく丁寧な作品解説により、
ハンガリー民謡の特徴を理解して
弾くことができます。
全40曲の中で大変興味深いのは、
子供のための曲集であるにもかかわらず、
「酒の歌」や「縁結びの歌」が
書かれているところです (^▽^;)
「酒の歌」の4曲中2曲の歌詞は
掲載不適当な内容で
バルトークよって割愛されていますが、
彼は農民たちの自然に発せられた
言葉の力強さ、純粋さに共感し、
それらの旋律の価値の高さを
学術的観点から認めていたので、
歌詞の割愛を口惜しく思っていたそうです。
その他27番の「冗談の歌」も
過激な歌詞なので割愛されています。
33番の「冗談の歌」は
大人がくすっと笑ってしまうような歌詞です。
↓↓↓
「庭で花を摘んでいたら、
足の骨を折ってしまった
私が結婚しなかったのは、
神のご加護に違いない
もし夫がいたなら、
きっと悪い夫であっただろう
嫉妬深く、しょっちゅう私を殴っただろう♪」
冗談歌は農奴たちの貧困や苦しみ、
単調な生活を紛らす活力剤であり、
威勢がよく明るいのが特徴です。
ハンガリー人は冗談好きな民族で、
バルトーク自身も痛烈な冗談を言う
センスの持ち主だったそうです (^^ゞ
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本日もお読みいただき、
ありがとうございました。